パネル交換・増設ルール見直しへ

現在10kW以上の事業用太陽光発電設備約67万件のうち約64万件(95%)が低圧(10~50kW)
の設備が占めています。
参考までに太陽光発電先進国であるドイツの場合、日本の低圧連系にあたる10~40kWの割合
はわずかに0.4%。日本の太陽光事情がいかに特殊か分かると思います。
そんな世界的に見てもかなり特殊な日本の太陽光発電事情の中、これまでのFIT制度から新たにFIP(フィード・イン・プレミアム)制度に段階的に移行途上であることはご存じだと思いますが、複雑な制度設計によく分からないという方も多いのではないでしょうか。

図)太陽光発電 FIT/FIP・入札の対象区分 出典:調達価格等算定委員会

先ほど述べたように事業用太陽光でほとんどを占める低圧太陽光については、現状ではFIPを選択できない制度になっています。
そこで資源エネルギー庁の「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」は低圧発電設備について、すでに認定を受けている案件、新規認定案件ともに一定の要件をクリアすることを前提にFIPを選択できるようにすることが提案されました。
これは低圧太陽光の長期電源化を目指すうえで非常に重要なことです。つまり事業用太陽光のほとんどを占める低圧太陽光が今後次々に売電期間が終了してしまうと、再生可能エネルギーの主力電源化という大きなビジョンを達成できかねない事態が起こることをさけるためにFIP選択を可能にするのは必要なことだと言えるでしょう。

一定の案件として提案されているのは、
・電気事業法上のアグリゲーター(と呼ばれる特定卸供給事業者)や小売電気事業者に対して 相対契約により直接供給を行なうこと
・当該発電事業者の保有する認定設備の出力合計値が一定規模以上であること
などが挙げられています。
アグリゲーターというのは直訳すると「集約する人」といった意味で、ここでは小規模多数の低圧太陽光をまとめて管理する役割を持った企業が、適正な事業を行なう発電設備をまとめて管理することで、いま問題になっている地域社会との共生や、長期主力電源化が推進されることが期待されています。

さて、本題の「パネル交換・増設ルールの見直し」ですが、現行ルールだと「3kW以上または
3%以上の出力増加」の場合、新たな設備とみなされその時点の調達価格/基準価格が適用される
ことになります。
近年の太陽光パネルは性能自体が向上しているため、古いパネルと交換すると現行ルールを上回ってしまうおそれがあるため、故障・破損パネルをそのままにし、結果的に発電所全体の出力を低下させてしまう、という負のループが全国的に生じています。
では具体的にはどのような見直しなのかというと、増設・張り替えの際に認定出力のうち、当初相当分は当初の調達価格を維持し、増出力相当分に対して「十分に低い価格」を適用する、という案です。

図)パネルの張り替え・増設ルールの見直し 出所:再エネ大量導入小委員会

「十分に低い価格」とはまたなんとも分かりにくい表現ですが、分かりやすく言うと既設の発電設備は系統接続費用が不要なので、最新の調達価格からこれらの費用を差し引いたものを「十分に低い価格」とするようです。
また、FIT・FIPの調達期間については、増設・張り替えの設備も含めて当初の調達期間が維持されるというのが今回の見直し案です。実際には調達価格等算定委員会で決定されます。

そして、蓄電池を併設するときのルールも緩和される動きがあります。
もっと詳しく知りたい方は再エネ大量導入小委の資料も併せてご覧ください。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/044_01_00.pdf