10㎾未満の分割案件を経産省が問題視!

皆さんご存知のように10kW以上の太陽光発電設備については、2016年より分割が規制
されています。
これは本来高圧の発電設備を作るべきところ、それを複数の低圧案件に分割することで
高圧設備にかかるコストを圧縮できてしまうことから原則禁止され、現在は申請時に厳しい
審査が行なわれているのですが、今度は10kW未満の地上設置型の発電設備について分割案件
が急増している、というのです。

一体どういうことなのかというと、その背景には10~50kW未満の太陽光発電について、
2020年度から設定された「地域活用要件」があります。

「地域活用要件」とは、発電した電力を自家消費(あるいは地域活用電源)したうえで
余った電力を売電できる、つまり実質的な余剰売電のみが認められる制度です。設備稼働後
も30%以上の自家消費率を維持していく必要があるため、今まで全量売電できていた低圧発
電設備にとっては簡単に建設できなくなるのではないかと見られていました。

一方で10kW未満の設備は自家消費率関係なく余剰売電が認められています。
そこで地域活用要件の規制を逃れるために発電設備を分割して10kW未満の設備として申
請する、というのが問題視された「新たな分割案件」です。

例えば50kWの発電設備を申請しようとすると、否応なく自家消費率が設定され全量売電が
できません。
しかし、これを分割し10kWの設備を5基申請すれば、余剰売電ではありますが自家消費率
の設定はなくなります。
10kWの地上設置の設備を5つ作り、それぞれを私設の街灯などの負荷に繋げておけば、昼間
はほとんど全量に近い量が売電できてしまう、という訳です。

これに似た手法は実は以前からありました。集合住宅などの屋根に設置した10kW未満のシ
ステムを共用部に繋ぎ、廊下の照明などの負荷に使うことにすれば、その実ほとんど売電でき
てしまう、というやり方です。
これは分譲マンションなどの場合管理組合の協議が必要だったり、比較的小さな賃貸マンシ
ョンの場合、新たに共用部だけ独立した電灯契約にする必要がある場合もあって、面倒だとい
うオーナーさんがいたりして、件数的にはそれほど多くならなかったので大きく問題視され
なかったのですが、まさか今になって地上設置の案件でこれに近いやり方が復活するとは思い
ませんでした。

経産省が公表した資料によりますと、地域活用要件が設定されて以降、地上設置の件数が急
増しています。2021年1月時点における2020年度の申請件数は4048件、認定数は2336件となっ
ていて、前年度937件/824件の4倍にあたります。

これを受けて経産省では屋根設置を除く地上設置案件について、10kW以上の設備と同様の
審査をすることを決めました。
いままで10kW未満の設備は分割することができない住宅用の屋根置きがメインだったた
め、現状では分割審査を行なっていませんでしたが、これからは10kW未満の地上設置型には
チェックが入ることになります。